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リンネンフェーラー(溝状収差)

リンネンフェーラー(溝状収差)   光学収差において、幾何収差成分であるザイデルの5収差や、波面収差などの用語や定義は光学設計者に限らず多くの関連するエンジニアが耳にした事があるのではないでしょうか。光学性能を精密に解析をする為、比較的計算が簡便なこれらの収差成分ではなく、膨大な光線追跡を必要とするコントラスト計算を用いる事が増えている昨今、幾何光学の基本を成す光学収差についての知識が不足しているケースが多く見られるようになりました。専門家である光学設計者においても、耳にした事がない方が多い収差成分として代表的なものが「リンネンフェーラー(溝状収差)」が挙げられます。 まず、光学的にはメリジオナル像面(座標軸Y)と、サジタル像面(座標軸Z)が存在します。光学瞳の、それら座標軸を通過する光線をそれぞれ、メリジオナル光線・サジタル光線、と定義して光学収差を計算する事となります。

M-S像面概念図(サイバネットHP 光学総合サイトより引用)

通常、メリジオナル光線であればその光線は結像面においてY軸方向についてのズレ量を「横収差」と呼び、理想のレンズからのズレ量として取り扱います。サジタル光線であれば、その逆にZ軸方向がそれに該当します。

リンネンフェーラー概念図
(宇都宮大学 オフアキシャル光学系の収差解析に関する研究若園毅氏 論文より引用)

それに対して、リンネンフェーラーは「サジタル光線のY軸方向のズレ」を定義した収差成分です。通常の光学設計の解析ソフトにおいては、まず意識する事も、判別する事もほとんど機会がない収差と言えます。スポットダイアグラムのようにランダムに任意の光線一本を多数追跡し、集光の具合を確認する中で認識する事も可能ですがほとんど判別不能なのが現実です。

高いNA(開口数)を有する光学系であると、M-S像面だけでなくSkew方向の収差を抑制する事や、本項のリンネンフェーラーの成分を念頭において光学設計を行う事が肝要になってきます。設計指針の一助とされる事を推奨致します。