フッ化カルシウム(CaF2) 昨今、半導体露光装置向けや4K、さらには8K放送向けの光学系においてCaF2の需要が大幅に伸びています。その影響もあり、高品質なCaF2の入手に苦労されているメーカー様が数多く存在しているのではないでしょうか。当社もその例外ではありません。
そもそも、通常の光学ガラスと異なり、CaF2は「結晶材」であります。 多様な材料がある種「練り物」のように配合されている光学ガラスと異なり、非常に純度の高い単一結晶物質という事になります。物質としての特徴は、下記が挙げられます。
1)等軸晶系である事(=Cubic)
2)蛍石型構造である事
非常に光学で、かつ加工も難しいCaF2を光学系に採用する目的は、
・異常分散特性を有し、色消し(波長補正)に有効である事
・良好な紫外線透過性を有する事
・純度を高める事で、優れたレーザー耐久性を有する事
が挙げられます。加工性に難がある材料ですので、歩留まり良く高精度に加工を仕上げられる加工メーカーは光学先進国の日本といえど決して多くはありません。出来れば使用したくない、というのが光学設計者の多数の方々のご意見ではないかと考えます。 生成方法としては、天然で取得される蛍石(Fluorite)、もしくは人工的に真空中もしくはN2パージ下において「Stockbarger法」が存在します。不純物を少なく高品位なCaF2を得る場合には、例外なく人工的な生成が必要となります。 また、異常分散特性を有するCaF2ですが、分散式の算出には主に2つの手法で算出がなされます。
1)Schneiderの分散式 (n2を元に算出)
n2^2 = a1 – (a2 / (λ1^2 – λ^2)) – a3λ^2 – a4λ^4
2)Malitsonの分散式(人工結晶の24度におけるn3をプリズム法で測定)
n3^2 = 1 + ((a1*λ^2)/(λ^2 -λ1^2)) + ((a2*λ^2)/(λ^2 – λ2^2)) + ((a3*λ^2)/(λ^2 – λ3^2))
今後、紫外領域における高性能な光学系のみならず、撮像サイズが大きくなり、かつ高精細な撮像光学レンズの需要の高まりに呼応し、CaF2の需要は益々高まる事が予想されます。必要な箇所に、必要最小限の量を適用する事で、性能面・コスト面の両立を図る努力が光学設計者には求められています。