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主光線(PRINCIPAL RAY)

主光線(Principal Ray)   光学系において光線追跡を行う際に、幾何収差量を議論する際の基準となる光線を主光線として取り扱うことが多くあります。主光線のそもそも定義は、「光学系の各像高物点から出て、開口絞りの中心を通る光線のこと」と規定されます。  

光線概念(Toshiba White Paper D4265989Aより引用)

それに対して、開口絞りの上端を通過する光線を上線(=上光線)、下端を通過する光線を下線(=下光線)と呼ぶわけですが、この主光線が通過するとされる開口絞りにより光線が一部分カットされてしまうケースが存在します。

これをヴィネッティング(=口径蝕)と呼びます。カメラレンズなど、コンシューマー製品でレンズサイズを小さく抑制したい事例、また実際に使用上で光量が低下しても問題がない事例に多く登場するものです。

ヴィネッティング概念図(サイバネットHP 光学総合サイトより引用)

このように、ヴィネッティングが発生した光学系の軸外の光線においては、上光線と下光線の開口絞り部での割合が異なる事となり、開口絞り部を通過する光束に着目すると有効な光束がいびつな楕円形状のようになる事が多い事例です。このような場合、主光線と呼ばれる光は、光束形状の中心を通過しない事となり、これを主光線と取り扱っていいものかという見方があります。 その為、主光線の定義を「上光線と下光線の中心を通過する光線」とする考え方も存在します。つまりは、ヴィネッティングが大きい光学系であればあるほど、主光線の定義の仕方により光学収差の形状や量が変化する、という事につながります。いずれの取り扱いが、設計対象の光学系にとって性能面、特性面において有効な概念か、を前提に光学設計者自身がその取り扱いを決定していく事が寛容といえます。