ビームエキスパンダー レーザービームを取り扱う場合において、ビーム径を任意の形状に変更するために用いられる光学系のひとつが、ビームエキスパンダーです。当該レンズユニットは、コリメートされた入射ビームを縮小・拡大をして射出する為、光学系としては焦点を結ぶ位置が存在しないアフォーカル光学系となります。元々、望遠鏡にて用いられている原理をそのまま応用した光学系であることから、原理面ではほとんど望遠鏡の光学系と考え方は同一という特徴を持っています。 ビームエキスパンダーの構成には、代表的に2つの方式があります。
- ケプラー式ビームエキスパンダー
- ガリレオ式ビームエキスパンダー
ケプラー式では、正の焦点距離を有する2枚のレンズで配置構成される事が特徴であり、各々の焦点距離を加算した距離を2枚のレンズ間隔とする為、全長がやや長くなります。 それに対してガリレオ式では、正の焦点距離を有するレンズと、負の焦点距離を有するレンズにて配置構成さます。その為、負パワー側のレンズの虚像位置に正パワー側のレンズの焦点位置を合致させる事で、全長が短くできる特徴を有しています。 レーザー側のレンズをObjective Lens、射出側のレンズをImage Lensとし、それぞれの焦点距離をfo、fiとした場合にビームエキスパンダーの倍率は下記計算にて算出されます。 ケプラー式 B = fi / fo ガリレオ式 B = – ( fi / fo) いずれの方式においても所望の倍率結果を得る事ができますが、ケプラー式の特徴としてエキスパンダー内においてObjective LensとImage Lensの焦点面にピンホールを配置する事で、空間フィルターとしての効果を得られ射出ビームをガウシアン形状にコンデンスする事が可能です。しかしながら、集光面が存在する事で高エネルギーレーザーを用いた際には、エアブレークダウン(大気中のダストや、浮遊物質などが高エネルギーで発火するなどの現象)や、スパークを起こし射出ビームの透過波面が乱れるという現象も起こり得ます。目的、使用レーザー、必要に応じた光学方式の選定が重要と言えるでしょう。
また、近軸計算とよばれる光学的な収差を勘案しない簡易計算により、これらのビームエキスパンダーの配置構成を考えるケースも多く見られますが、実際には光学収差やその他複雑なレーザー特性により得られるビームプロファイルは大きく変わります。所定の性能を得られないケースもあり、精密解析を実施できる光学設計者が光源特性含めて解析を行う事が肝要と言えます。