光学設計・解析の面において、デスクワークで心底苦労した経験もありますが、なんといっても大きな苦労は「現場」で発生します。その中で最も印象に残っているのは、量産工場にインストールした生産装置において、設計性能を十分に満たしているはずの光学系が、現場に搬入後にどうしても性能を満足できなかった事例です。
それは紫外線を用いて感光性材料にパターンを形成する露光装置でしたが、出荷時点における評価では所定の性能を確保できていたにもかかわらず、生産ラインに設置された後の最終評価では、性能不足と判定されました。露光装置において、投影光学系の性能が不満足となると装置自身の価値がなくなってしまいます。本来生産をしなければならない製品を、量産できないと判断されるためです。露光装置に限らず、光学系が主要なユニットとして運用される装置においては、そのユニットの性能が当該装置の性能の大半を示す、と言っても過言ではありません。
装置引き渡しまでの期限が迫る中、不眠不休に近い状態でクリーンルームに閉じこもり、必死に光学系の調整を繰り返して行い、なんとか初期性能に復旧する事が出来た時の安堵感は、今でも忘れられません。設計性能を確保する、理論のあるべき姿を議論する。それらも確かに重要ですが、このような困難な現場で、粘り強く手を動かし、決してあきらめずに性能確保に挑む「光学に対する熱き想い」は、当社EORICの全エンジニアのモットーです。