レンズが
できるまで

1

無から有への創生 = 設計・開発工程

 

こんなことがしたい、出来たらいいな、の願望・要望に基づき、無の状態から有への創造を行う工程が「設計、開発工程」です。設計・開発者にとって腕の見せ所である工程ですが、それらは知識だけでは最良のゴールにはたどり着けません。経験・知恵、そして創造力が大きなドライブ力となり、より優れた製品へと繋がります。「性能」「コスト」「納期」の3大要素が製品としての競争力の源泉ですが、当該工程においてその大半が決まると言っても過言ではありません。

2

硝材からレンズの卵が生まれる = 荒摺り・砂掛け工程

 

各種の材料を溶解し混ぜ合わされ、固体化したガラスを「硝材」と呼びます。ただのブロック体である硝材を、目的のレンズ形状に近づけるために、加工機や微小な砂を用いて整形する工程が「荒摺り・砂掛け工程」です。精密なレンズ研磨を効率よく行うためには、当該工程により正確な形状仕上げが重要です。

3

レンズに魂が宿る = 研磨工程

 

大まかに目的のレンズ形状へと整形された硝材を、材質に応じた最適な研磨剤を使用して磨きあげる工程を「研磨工程」と呼びます。この研磨工程が、硝材からレンズへと生まれ変わらせます。レンズに魂が宿る瞬間です。表面の加工精度は、ナノメートルオーダーであり、関東平野の大きさに対してゴルフボール数個程度の段差しか存在しません。自動化が進む昨今の加工工程の中でも、熟練の技能と経験を必要とするレンズ加工工程の最重要工程であると言えるでしょう。

4

あるべき姿を求めて = 検査工程

 

レンズとして求められる諸精度が真に得られているかを、様々な指標で検査する工程です。ナノオーダーを計測する干渉計、ミクロンオーダーを計測する各種計測器、そして汚れや傷などを発見する「匠の眼」。それら全ての検査を合格したレンズのみが、表面の反射率や透過率を高めるためのコーティングを経て、次工程へと流動されます。あらゆる不良をストップ・防ぐという意味で、重要なゲートキーパーの役割を果たします。

5

ブレのない芸術品へ = 芯取り工程

 

所定の性能を達成したレンズを、さらに表面・裏面の光軸がしっかり一致するように外周部を削る工程を「芯取り工程」と呼びます。高精度に光軸を計測し、精密に外周加工されたレンズは、ブレのない芸術品へと昇華されます。いかに優れた研磨工程を経ていても、当該工程でブレが生まれたレンズは一本芯の通った光学系にはなり得ません。

6

芸術品を支える名脇役 = 機械部品加工工程

 

レンズや光学部品は、設計された時点では「空中に浮かんだ空想品」の状態です。理想のレンズ配置を実現するためには、レンズ自体を高精度に保持・維持する構造品が不可欠です。それら機械部品を加工・製作する工程を「機械部品加工工程」と呼びます。非常に精密な切削加工・研磨加工等を実現できる工作機械などを用いて、匠のレベルの技術者が加工方法を考え、操作し、加工を進めます。こうして作られた機械部品は、芸術品ともいえるレンズを理想どおりに形作るための、名脇役です。

7

光を操る魔法道具の誕生 = 組立・調整工程

 

求められる性能を達成するために必要な精度で、レンズや機械部品など個別の高精度部品を組み立て・調整をします。レンズの軸、レンズ間隔、保持方法、自重変形、熱変形など様々な要素をすべてクリアするよう、ミクロンオーダーでのあらゆる作業が求められます。寸分のズレもなく組立・調整された光学系は、こうして見えない光を任意の目的どおりに操ることができる魔法の道具として完成するのです。